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平成25年1月12日:H24年度 第2回家庭教育委員会研修会(寮美千子氏講演会)

  1. 郡市連P名 京都府PTA協議会
  2. 活動名称 H24年度 第2回家庭教育委員会研修会(寮美千子氏講演会)
  3. 主催/共催等 京都府PTA協議会 / 相楽地方PTA連絡協議会
  4. 開催日 平成25年1月12日(土)
  5. 開催時間 13時45分~15時35分
  6. 開催場所 精華町立東光小学校 図書室
  7. 参加対象 京都府PTA役員、相楽地方PTA連絡協議会会員 計約70名
  8. 活動内容
    詩が開いた心の扉
    『空が青いから白をえらんだのです -奈良少年刑務所詩集-』
    講 師:寮 美千子(りょう みちこ)氏

【活動内容】

  空が青いから白をえらんだのです

これは、奈良少年刑務所の受刑者の少年の一人が、書いた「くも」という題の詩です。
今回の講師、寮美千子さんは、絵本や童話・詩など幅広くご活躍される傍ら、奈良少年刑務所の更生教育である「社会性涵養(かんよう)プログラム」の講師のお一人でもあります。先の「空が青いから白をえらんだのです」をタイトルとする「奈良少年刑務所詩集(長崎出版/新潮文庫)」は、受刑者たちがこのプログラムを通じて書いた詩集です。今回、この詩集をとおして受刑者たちの心の声に耳を傾けて、あたりまえの感情をあたりまえに表現でき、それを受け止めてくれる誰かがいる家庭を原点とした社会の基本を寮先生とともに見つめ直しました。

  • 「社会性涵養(かんよう)プログラム」とは?
    奈良少年刑務所には、17~26歳まで約600人の受刑者がいます。その刑務所の作業所の中でも、特に内気で自己表現が苦手で、他人と歩調を合わせる事ができず、ともすればいじめの対象となりかねない、周囲とのコミュニケーションに非常に問題のある受刑者を対象とした更生教育プログラムのことです。
  • 「社会性涵養(かんよう)プログラム」の役割とは?
    「受刑者の多くが、家庭では育児放棄され、まわりにお手本になる大人もなく、学校では落ちこぼれの問題児で先生からもまともに相手にしてもらえず、かといって福祉の網の目にはかからなかった。そんな、いちばん光の当たりにくいところにいた子たち。ですから、情緒が耕されていない。荒れ地のまま。自分自身でも、自分の感情がわからなかったりする。でも感情がないわけではない。抑圧され、たまった感情が、ある日爆発・・・・。寮先生には、童話は詩を通じて、あの子たちの情緒を耕していただきたいのです。」(刑務所職員の話・詩集の解説より)
    刑務所での受刑期を終えたから、といっても、決して犯した罪が消えることではない。一生かかって償い続けて然るべきである。けれども、この更生プログラムのチャンスがなければ、自分の犯した罪の大きさや深さに気づいて、心から被害者に謝罪の気持ちを持つことすらできない受刑者もいるのである。
    「あたりまえの感情を、あたりまえに表現できる。受けとめてくれる誰かがいる。それこそが、更生への第一歩です。」その一歩を踏み出すための重要な役割を担っている。
  • 寮美千子先生のお話の中から、日常の学校生活や家庭においても大切だと思ったこと。
    • ― 子どもの心を全面支配するような親になってはいけない。
      (恐怖政治の君主のような親のもとでは、子どもは状況に応じた正しい判断ができない。一見「育児放棄」とは正反対の「君主的な親」が意外にいる。)
    • ― 心を閉ざし、反抗的な態度をとっている彼への対応は、態度についてとやかく言うのではなく、彼の心から出てくるものを聞く、受け止めること。
      (態度に対する指導を先に行っても心を閉じるばかり。心を受け止めると、おのずと態度はかわる。)
    • ― 暴力は絶対だめ。暴力からは何も生まれない。暴力は麻薬と似ていて、習慣化されエスカレートするものである。(暴力する人は早いうちに止めさせるべき。)
    • ― 人間は一人では成長できない。人との交流の中でこそ、育つもの。
      人には互いに気持ちを受け止めることができる複数の友だちが必要。
  • よい親子関係とは?
    毎日、なにげなく、親子でゴチャゴチャとやりあって生活している中で、言いたいことがいえて、子どもの不満もある程度ぶつけられる親であること。親子げんかをしても、あなたのことは大切に思っているのだよ、ということが子に感じられる親であることが大切。
  • まとめ・感想
    子ども達は成長する過程で、困難な物事にぶつかったときに、周囲の誰かに、ふっと聞いてもらえる環境を持つことが必要で、聞いてくれた相手の反応や対応、それが、彼・彼女たちの心と外との関係をひとつずつ築き上げていく経験なのでしょう。
    不幸にして、受け止めてくれる誰か(家族、先生、友だち、近所の大人・・・)に恵まれず、心を閉ざしてしまった彼ら。「社会性涵養プログラム」は、彼らの成長過程の空白を一から埋めてやり、仲間の中で、自分を表現することを学び、さらに自分が認められる感覚を身につけるのを助けるとのことです。このプログラムで、仲間と心を寄り添う体験をして、詩という表現ツールを得た彼らの変化は目覚ましい物があるといいます。
    冒頭の「くも」の一行詩を作った彼は、刑務所に入ってから人前で一度も物を言わず、極端に人見知りがはげしかったそうですが、この詩を朗読したとたん、堰を切ったように語りだしたそうです。
    「母は亡くなるとき『つらいことがあったら、空を見て。そこにわたしがいるから。』と言いました」と。そして、誰にも語ることのなかった、幼いころにたくさん傷ついた彼の心を打ち明け始めたそうです。
    子は社会の宝です。愛情を受ける機会にめぐまれずに育ち、刑務所にはいってしまった子たちの社会復帰の応援も大切ですし、またそれ以前に、いずれの親も先生もが、子どもに正しい愛を注げるように、大きな視点で家庭や学校を応援することも、とても重要なことでしょう。
    「被害者を作らない、ということは、つまりは、犯罪者を生み出さない社会をつくることである」、ということを忘れてはなりません。